★覇権の起源
国際政治を考える際に「覇権」(ヘゲモニー、hegemony)
という言葉はとても重要だ。国家間の関係は、国連などの場で
の建前では、あらゆる国家が対等な関係にあるが、実際には大
国と小国、覇権国とその他の国々の間に優劣がある。今の覇権
国はアメリカである。
「覇権」は一般的には、国際的な「支配」と同義のように使わ
れており、私もそのように漠然と思っていたが、よく調べてみ
ると、覇権は、いわゆる支配とは定義が明確に異なる。覇権と
は「武力を使わずに他国に影響力を持つこと」である。支配と
いう言葉から思い起こされる、武力によって他国を傘下に置く
植民地、保護国、傀儡政権などは、覇権の範囲に入らない。
傀儡政権でも、イラクのように明確に軍事侵攻の結果である
場合は「覇権」とは呼びにくい。イラクの場合、建前としては
「フセイン政権を倒すことがイラク人の総意だったが、イラク
人自身は力を奪われてできなかったので、代わりに米軍がフセ
インを倒してやった。その後、イラクに民主国家が建設されて
いく過程が現状であり、米軍はイラクの民主国家建設を支援し、
イラクに入り込んでテロを続けるアルカイダと戦っているだけ
で、軍事支配とか傀儡政権化とは全く異なる」ということにな
っている。
しかし、同じ傀儡化でも、戦後の日本のように、最初は軍事
占領で傀儡政権(と疑われるもの)が作られ、その後は米から
完全に独立した民主主義国家として機能しているものの、60
年たっても対米従属で、外交権を自主的に米に引き渡している
場合はどうか。今の日本人の大多数には、米から抑圧されてい
るという自覚は全くないから、米から日本への影響力行使は、
まさに覇権そのものといえる。傀儡化と覇権とは、矛盾する概
念ではないことになる。影響力行使の際、武力を背景にした脅
しが存在するかどうかは微妙な問題であり、覇権(武力なし)
と支配(武力あり)との境目は曖昧だ。
(傀儡政権は、国民にとって必ずしも悪いものではない。東条
英機よりマッカーサーの方が良い行政をすると当時の日本人の
多くが感じ、日本は自主的に米の傀儡になった。米軍侵攻直後、
イラク人はフセイン時代より生活が好転すると期待したが、実
際にはむしろ生活はひどく悪化したので、イラク人は反米にな
った)
もっと広く考えると、今の世界で、反米を掲げている国以外
のあらゆる国の政府は、米政府筋から何か非公式に忠告や批判
をされたら、それがいかにやんわりと曖昧としたものであって
も、かなり強く重視するはずである。これが覇権の関係である。
その意味で、米は覇権国である。
米からどんな非公式忠告を受けたか、それを受け手の政府中
枢がどう分析判断し、反応するか、マスコミには全く出ないケ
ースがほとんどだ。覇権は隠然と行使され、隠然と対応されて
いる。覇権の本質や行使の手口は、ほとんどわからない。政府
から完全自立しているはずの日本のマスコミが、なぜ対米従属
の偏向報道を続けるのか。日本のマスコミが「偏向」している
のかどうかということ自体を含め、満足な議論になるだけの根
拠や材料がない。しかし、私のところに来る読者からのメール
の傾向からみて、3年ほど前から「日本のマスコミは偏向して
いる」と考える人が増えている。
アジアの国々は最近、米と並んで、中国からのやんわりとし
た忠告を重視する傾向を強めている。ミャンマー問題のように、
米と中国が相反する主張をしている場合、間にはさまる東南ア
ジア諸国は、微妙なバランスをとった政治を展開する。中国は、
アジアの覇権国になりつつある。同様に、先日のグルジアとロ
シアの戦争で、英以外の欧州諸国がロシアをほとんど批判しな
いことからは、ロシアの覇権拡大がうかがえる。私の「隠れ多
極主義」の分析は間違いだと言う人でも、世界の覇権体制が多
極化していることは認めざるを得ない。
(グルジアの戦争については改めて書くが、要点だけ先に書く
と、先に攻撃したのはグルジアの方であり、米がグルジアのサ
ーカシビリ大統領をそそのかして攻撃させたのだろう。ロシア
を非難する米英マスコミは偏向している。南オセチアとアブハ
ジアが再びグルジア領に戻ることはなさそうだ。グルジアの国
防相と国家統合相はイスラエルとの二重国籍を持ち、ヘブライ
語を流暢に話す。イスラエルはグルジア軍の特殊部隊を訓練し
てきた。サーカシビリは間抜けな戦争を仕掛けた責任をとって
辞任に追い込まれるかもしれない)

0 件のコメント:
コメントを投稿