▼産業革命が世界覇権につながった
人類史上、初めて世界的な覇権を構築した
のはイギリスである。1815年にナポレオ
ンを破ってから、1914年に第一次大戦が
始まるまでが、イギリスの覇権期(パックス
・ブリタニカ)だった。
イギリスが世界覇権を初めて構築できた主
因は、1780年代から産業革命を引き起こ
し、それまで馬力や人力、水力などしかなか
った動力の分野に、蒸気機関やガソリンエン
ジンをもたらし、汽船や鉄道などを開発し、
交通の所要時間の面で世界を縮小させたから
である。産業革命前の世界は、中国から欧州
に行くまで何カ月もかかり、中国と欧州を一
つの覇権国家が支配することは難しかった。
13世紀、馬の速力を使ったモンゴル帝国が、
中国から黒海までを支配したのが唯一の例外
だった。
15-16世紀、スペインとポルトガルが
大航海によって世界帝国を作ったかに見える
が、彼らは世界のいくつかの港湾拠点を帆船
でつなぎ、年に何回かの航海をしていただけ
で、多くの国々は、スペインやポルトガルと
関係なく存在していた。中国には欧州より豊
かな明・清の帝国があったし、中東経由の陸
路でアジアに行く貿易路はオスマントルコ帝
国が支配していた。
英に始まり、欧州大陸諸国に広がった産業
革命は、英を中心とする欧州の産業力、軍事
力を格段に発展させ、中国やオスマン帝国は、
やがて英が主導する欧州列強によって破壊さ
れ、分割支配された。
英は覇権国家となったものの「武力を使わ
ず、政治文化的な影響力だけで他国を動かす」
という覇権の行使対象となっていたのは、欧
州地域の国々だけだった。欧州以外の国に対
しては、中国に対するアヘン戦争(1840
年)や、アフリカ分割(1880-1910
年代)などで武力を行使し、植民地化して露
骨に支配した。
英が、欧州諸国に対しては「覇権」による
隠然支配を行う半面、欧州以外の諸地域に対
しては露骨な植民地支配を行った理由はいく
つかある。その一つは、ローマ帝国以来、欧
州はキリスト教世界としての一体感があった
こと。もう一つは経済的に、欧州は英が産業
革命によって大量生産した商品の売り先であ
り、欧州全体の安定が英の発展にとって必要
だった。また、英が強国になった時には、す
でにスペイン、フランス、オランダ、ロシア
などが強い国として存在しており、それらの
他の列強と戦って勝つことは無理だった。英
は、海軍は最強だったが、陸軍は弱かった。
英は、世界で最初に民主主義の理念を開発
した国である。1215年の「マグナカルタ」
で貴族と王家との権利義務関係が文書化され、
国民(臣民)と王家との権利義務関係も16
28年の「権利請願」にさかのぼる。英は、
自国が民主主義を政治の建前とする以上、他
の欧州諸国の民主主義も尊重し、英が他国を
露骨に支配する方式を避けた。財政的にも、
戦争ではなく諜報や外交の政治謀略で覇権を
取った方が有利だった。
これが、英国の英国たる由縁・・・だな。

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